原題は"Reinventing the Bazaar, A Natural History of Markets"。標題の通り市場を如何に「創る」かという点に力点が置かれた書であると思う。市場とは「唯一の自然な経済」であり、どの様な環境においても、自生的で立ち直りが早い(ガーナのマコラ市場の事例)。しかし、それは「人間的な不完全性を伴った、人間による発明物」であり、ルール、慣習、制度による支えを必要とする。市場をうまく機能させるには、(1)情報の流通(情報の非対称性)、(2)信頼、(3)競争の促進(独占・寡占)、(4)財産権の保護、(5)外部不経済の抑制、といった課題に応えることが必要である。
本書のメッセージは、次の2つの皮肉に要約できるという。「貧困を嫌悪している政治的に極左の人々は、貧困を固定化する政策を支持している。市場を尊重する自由放任主義の熱狂的な支持者たちは、市場の崩壊を引き起こすシステムを提唱している。」
第16章では貧困の問題が取り上げられるが、貧困は、通常は経済成長によって減少する。経済成長は、貧困問題の全てを解決するわけではないが、同時に成長は貧困問題を解決するための不可欠な一部でもある。政府については、大きい政府支出は低成長と関連するが、政府が経済の非常に小さな部分でしかないときにはそうではない。その意味では、「現代経済」はリバタリアン的原理では機能し得ない。