筆者の前半生を描いた第1章から投信運用会社社長としての立場を意識した著述が随所に見られる。いわばこの本は同社とその投信のプロモーションブックである。
これは近年のアクティブ投信がファンドマネージャーの人となりまで見た上で選ぶのが主流になっているためで、ファンドの購入に至らなくても投資方針に見るべきものがあれば大いに参考にすればよいのだから責められる性質のものではない。
2・3章は筆者の経験から身に着けたソロス氏独自の理論である「再帰性理論」を用いて日本のバブル期以降の世界におけるブーム・バブルとバーストを説明(さらに言えば効率的市場仮説を否定)している。
その理論の切れ味は鋭く、圧倒的な迫力をもって読むものに語りかけてくる―ソロス氏を世界一の相場師たらしめた理論なのだから当たり前だし、独自の理論を持てる者のほうが少数派なのだからこれもこれでいい。
ところが独自の投資理論や展望を述べる段になると途端に怪しくなってくる。
木に竹を接ぐような理論、JETROなどの1次情報を調べていないのが丸分かりの世界観…。
特に中国政府の細部が矛盾に満ちた統計を鵜呑みにし、都市部と農村部の貧富の差の拡大や人民元安誘導による購買力縮少に目をつぶって「13億の中産階級の誕生」などと述べているのには乾いた笑いしか出てこない。ソロス氏の「世界の民主化を資金面で支える闘士」としての顔に触れる機会はなかったのだろうか?
唯一突っ込まずに済むのは「スマートグリッド・クリーンエネルギーに注目」だけという体たらくである。
これだけ現状が見えていない人物がマーケットの表舞台にいるのであれば、彼とそのファンドが「黄金の羽根をばら撒きながら堕ちていく天使」になる日も近いのではなかろうかと危惧する。
そうなったときは…今はゼロが5〜6個少ない資力とはいえ、同じマーケット参加者として取るべき行動を取れるだけの資力と眼力を持っていたいものである。
評価は星1個…のところをソロス氏と筆者が薫陶を受けた期間に敬意を表して2個に