本書が執筆されたのは07年12月だということを考えると、急速な変容を見せる危機の最中の分析、洞察としては読む価値が高い。しかし、新興諸国の経済展望が楽観的過ぎて、今では完全に否定されたデカップリング論に近い視点を取っていることなど、やはり急展開する危機の中での将来見通しがいかに困難なものかを自ら証明しているとも言える。「大転換」という言葉がしきりに登場するが、今回の危機の後に到来する世界環境が予想されているとまでは言えない。一見平常に見えた市場が突然として異様な変容を遂げる連鎖、それが起こるシグナルを見抜けという指摘は妥当である。しかし、その方法論が体系的に語られているわけではない。ただしこうした限界は、極めて高い水準からの要求であり、今回の危機の分析本としては質の高い内容であることは間違いない。