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巴里茫々
 
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巴里茫々 [単行本]

北 杜夫
5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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登録情報

  • 単行本: 134ページ
  • 出版社: 新潮社 (2011/12)
  • ISBN-10: 4103062371
  • ISBN-13: 978-4103062370
  • 発売日: 2011/12
  • 商品の寸法: 19.4 x 13 x 2.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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北氏は小説家を志すにあたり、ふたつの目標を自分に課した。ひとつは、人生の四季を四編の小説として書き上げる事であり、いまひとつは、「ブッテンブローグ家の人々」を模した、自らの一族の物語を書き上げる事であった。これらは、彼の小説に馴染んだ者なら誰でも知っていることだ。そのうちの第二の目標は、「楡家の人々」に結実したが、第一の目標は未完のままであった、というのが、従来の彼の作品群に対する評価だろう。だが、「巴里茫々」を読めば、それが誤りだったことが分かる。なぜならこの作品は、四部作になるはずだった彼の四季の連作の第二作である、「木霊」の続編になっているからだ。彼は、「楡家」を書き上げた後で、不幸にも精神に病を得て、それ以降、本来望んでいたような作品を書けなくなった。無理が利かなくなったのだ。その苦しみをひた隠しに隠して、世間に対してユーモア小説作家として振舞い続けた。だが本心は、あくまでも他にあった。それが、「巴里茫々」で吐露されている。
「木霊」の女性は、「楡家」にも、三人姉妹のひとりの女性の姿に、その面影が投影されている。彼女は「木霊」の中で、主人公に稚拙な物語を書き送る。金髪のインゲボルグに模されているように、彼女は難解な小説に親しむタイプではなかったようだ。そうであるなら、北氏が「さびしい王様」のような読み物を書き続けた理由も理解できる。きっと彼は、すでに会うこともなくなったひとりの女性のために、彼の小説を書き続けたのだろう。「巴里茫々」を読めば、それが分かってしまうから、この作品は、彼の生前には、単行本としてついに刊行されなかったのではあるまいか。世田谷区松原の自室に籠りながら、彼の心はいつも、ひとりの女性を忘れるために船に乗って欧州へ向かった、青年の日々に戻っていった。「巴里茫々」はそんな事を想像させる、彼自身の手による鎮魂歌である。
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「巴里茫々」では著者が夢の中で仏蘭西語など全然知らないのに、仏蘭西の国歌「ラ・マルセイエーズ」を歌ったというくだりが出てきます。それはそれで面白いのだが、改めてこの歌詞を読んでみると物凄い内容であります。

♪圧政者どもよ、身震いするがいい! お前ら裏切り者共もだ。
あらゆる陣営の恥さらし! 恐れるがいい! お前らの反逆計画は最後には報いを受けるのだ!

そして、
♪この残虐な奴らは皆、情け容赦なく、自分の母親の胸を引き裂くのだ!

と来るのですからね。

著者はそのあまりにも軍国主義的で勇壮という野蛮な内容に辟易してとうとう歌うのをやめてしまうと、隣にいた仏蘭西人から「このジャップの小鼠め!」と罵られます。

されど本邦でもそのうち「君が代」を歌わないでいると、同じように泣く子も黙る大阪の禿童市長から「この非国民め!」と罵られたうえに、全員牢屋に入れられるようになるでしょう。桑原桑原。

もうひとつの「カラコルムふたたび」は名作「白きたおやかな峰」に出てきたヒマラヤの村を再訪し、懐かしい案内人と再会するほろ苦い話です。
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