「みずほ銀行」は、江上剛氏の作品の中では「ミズナミ銀行」(合併人事ー二十九歳の憂鬱、隠蔽指令)、「イナホFG」(異端王道)、「ミズナミG](大罪)として数多く登場する。みずほの大統合から時間は経ってしまったが、当時の一勧、富士、IBJの危機的状況と、ドロドロの合併劇の実際を思い返したくなった。本書の須田慎一郎氏の文章はストレートで面白い。読みながら当時を思い返すと、大和/NY事件、三洋証券、北拓、山一、LTCB、日債銀、安田信託、日本信託等々本当に怖かった。海外市場でジャパンプレミアムが跳ね上がり、市場からドル資金が調達できない恐ろしさを私も直接経験した。また合併に関しては、貸出競争、システム、合併準備の主導権争い、あらゆる不毛なギクシャク感を私も十分に見てまた味わった。ところで「富士」と言えば、春日部支店や赤坂支店の大事件だ。それにFS戦の結果の不良債権の山だ。山一に安田信託、進退窮まった。「一勧」と言えば、そもそもDだ、Kだと超長期「でくのぼう戦争」、首脳陣逮捕・会長自殺という最悪の総会屋事件、進退窮まった。「IBJ」と言えば、80年代には興長銀の時代は終わり、バブルで進むべく舵取りを完全に間違えて、尾上縫への巨額融資、プロジェクトファイナンスは独壇場と意気込みはいいが、IBJもLTCBも競って成功しない経営破綻案件の山、おまけにサウジ/アラムコによるLC非適格通知。これら周囲の現実と、懲りない興銀マンの超エリート意識とのアンマッチ、完全に進退窮まった。この進退窮まった3行が大統合してもその後の経営舵取りは難しい。そして須田氏がやけに強く批判する前田晃伸氏と、旧各行の経営者達、今後の迷走はどうなるのだろう。銀行は真摯に全うな経営を肝に銘じ、sound bankingに徹し、国民生活を脅かさぬように願いたい。