奈良県の纒向遺跡で最古の木製仮面が出土したと先月26日に発表されたが、同日付朝日新聞の「天声人語」欄では、「遺跡は邪馬台国の有力候補地、年代も卑弥呼の治世に重なるとくれば、夢想は広がる」などという文章が踊っている始末。例によって、邪馬台国大和説のマスコミのお先棒担ぎに過ぎないと思われるところ、本書の著者ならばどのように考えるだろうか?
さて、本書から窺われる著者の立場は邪馬台国九州説。纒向遺跡の中にある“箸墓”(箸中山古墳)について、「邪馬台国大和説をとる論者からは、卑弥呼ないしは台与の墓として3世紀後半の築造とすらみられている」が、著者は、現在被葬者とされている巫女と崇神天皇との政治権力関係や「宮都と陵墓の対応」という観点からみて、“箸墓”は「4世紀前葉の崇神」の陵墓と比定する。
以上は、本書で展開される分析のごく一部に触れたに過ぎない。著者は本書において、「日本の巨大古墳上位50ほどの全て」について、現時点でなしうる限りの被葬者比定を行っているのだから!
としても、巨大古墳のそれぞれに関する議論が単に書き並べられているわけではない。そこには、古代氏族系図の研究30年超の経験に裏打ちされた明快な方法論が見て取れる。すなわち、著者は、記紀を始めとする文献資料の検討を行う文献史学の立場にたちつつ、「考古学の成果を取り入れ、総合的に考え」るという手法を採る。「考古学関係の学究の文献史学に対する無視が著しく、そうした前提のもとでは、古墳被葬者の解明などできるはずがない」と考えるからである。
こうした方法論がたんなる方法論で終わらずに、個々の「古墳被葬者の解明」に当たり見事に生かされているところが類書に見られない本書の特長だ。
ところで、冒頭で取り上げたマスコミの動きに対し、著者ならば、出土品の重要性を認めても、考古学だけで全ての史実が解明されるわけでもないのだから、「マスコミ報道」は冷静であってほしいと必ずや述べることだろう。