本書は2人の人物を中心に展開していく。1人はインディアナのマーク・ヤングである。彼はマリファナ取り引きのケチな役割で罪に問われ、仮釈放なしの終身刑を言い渡された。もう1人はルーベン・スターマン。強大なポルノ販売帝国を創設、経営していたオハイオ出身のこの男は、わいせつ罪で罰せられるのをいくたびか逃れた末に、最後は脱税で有罪になった。ヤングとスターマンの悪戦苦闘と、カリフォルニアのイチゴ摘み移民労働者の生活を物語りながら、シュローサーは「疎外され、内部矛盾を抱える」アメリカ社会の実態を明らかにしていく。本書の調査報道のレベルは『Fast Food Nation』同様に高く、注目すべき1冊である。
前作のシュローサーはマーケットの抱える問題を大胆かつ独特の視点から提起したが、本書で取り上げられている麻薬取締法の問題点や、カリフォルニアのイチゴ農場の移民労働を看過しながら、ポルノ産業の販売者を投獄したがるピューリタン的偽善に迫ったのはシュローサーが最初ではない。それでも、本書はシュローサーの堅牢にしてタイムリーな労作といえる。いま世界の出来事はアメリカ国民に戦うに値する価値の選択を迫っているが、シュローサーは「自由の値段は、往々にして自由がもたらすものである」ことを読者に思い出させるのである。
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ポルノ市場や不法移民など、私たちが普段耳にすることのない、
アメリカ経済の闇の部分が実に生々しく描かれています。
筆者は、自由主義の原則が、政府によって「恣意的に」適用される
ことが、結果として地下経済を大きくする考えています。
道徳的に間違っているという理由だけで厳しく取り締まわれたため、
巨大な闇市場ができてしまったマリファナ。
不法移民による、巨大な闇の労働市場なくしてはもはや成立しない
カリフォルニア州の農業などなど、その実態はきわめて酷い。
自由主義という理想が、一部の企業の方便として使われたために
こうした悲劇が起きたと筆者は論じています。
自由主義という美名の下に行われている不正義を告発した本書。
市場万能主義が抱える矛盾について考えさせられる一冊です。
1作目が相当じっくり取材してあるのが端々に見えるのに対し、本書は取材が物足りないという読者の声もあるようだが、そもそも地下経済の秘密性を考えれば仕方の無い部分もあると思う。マクドナルドを取材するのとはワケが違うのだ。
アメリカ経済の10%を担っているといわれるアングラ経済。興味を惹かれずにはいられない。
私が最も興味を持ったのはメキシコの不法移民がアメリカ労働市場に及ぼす影響である。この問題は現在の日本における不法残留外国人が日本社会に与える影響を連想させ、興味深い。好むと好まざるとにかかわらず、不法移民無しでは成り立たないアメリカ。日本はまだここまで影響を受けては無いものの、ごく近い将来同じ問題に直面するだろう。日本はどういう道を選ぶのだろうか?
逆に物足りなかったのは、ポルノ業界についての話。ルーベン・スターマン個人に焦点を絞りすぎているため、私の興味主題である「地下経済」からそれてしまった。地下経済の話をするなら、なにもポルノ業界でなくてもよかったように思う。巨大企業エンロンが4年ものあいだ所得税を全く払わなかったばかりか、何万百万ドルもの税の還付を受けていたと知ってあきれ返ったが、こちらを主題にしたほうがよかったのでは、と思えた。
前回が「食」という、生きてゆくには不可欠のものを扱っていたが、今回は全体像の捕らえにくい「地下経済」。迫力不足は仕方ないだろう。
とはいうものの、アメリカの政治や経済、「アメリカ人的思考」に興味のある人は一読の価値ありと思う。
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