亡くなった巨匠たちの生前最後の演奏会に光を当ててまとめた書物。トスカニーニ、バーンスタイン、グールド、フルトヴェングラー、リパッティ、カラヤン、カラス、クライバー、ロストロポーヴィチの9章からなり、番外編でモーツァルトを扱っている。
リパッティのように伝説となったコンサートはあるが、全ての演奏家が劇的なラスト・コンサートを行うわけではない。力尽きて舞台を去った人もいれば、スケジュール帳には予定が詰まっていたのに不意に死が訪れてしまった人もいる。実在の人を扱っているので、最後の演奏会と音楽と死の描写が生々しく、考えさせられるものがあった。
本書で印象深く感じたのは、カラヤン最期の言葉「まだ今ではないのに。」だった。突然訪れた死は、巨匠にとっても不意打ちだったのだろう。