巻頭の作品『ギルガメシュの物語』に始まる、約三十年にわたって描き継がれた連作は
一本の短剣をめぐり、古代メソポタミア、クレタ、アフリカを舞台に展開する壮大な物語です。
舞台はおもに神話世界ですが、神話にその名を残している英雄たち(のモデル)が
卑怯で野蛮な文明の破壊者、あるいは夢に憑かれた放浪者として
描かれているところが、諸星ワールドの真骨頂といえるでしょう。
征服し、破壊し、やがてその野心のため自らを滅ぼす男たちと、
大地に生きるアフリカの少年、運命に翻弄される少女といった
登場人物が織りなす雄大な叙事詩は、人類の縮図ともいえる普遍性を持って
現代に生きる私たちの心にも強く迫ってきます。
第二部の二編の中国物は、『諸怪志異』の系列に連なる奇妙な味わいの佳品で
これまた諸星ワールドを堪能できます。
1600円と値段は少々お高めですが、装丁も奇麗で紙質も良く、
しっかりした作りの本なので、諸星ファンにはお勧めだと思います。