しばらく前のYouTube動画で知り、「でかい操り人形を街中で動かすパフォーマンス」程度の認識でDVDを購入してびっくり。予想を遥かに上回る感動だった。巨大な機械たちは確かに凄い。しかし真の主役は機械の来訪を受けて変貌する街そのものであり、そこで暮らす人々なのだ。
平和な町である朝、建物に巨大なサンダルが引っかかっているのが見つかる。一台のバスが巨大なナイフで切り裂かれ道路に縫い止められている。怪しいおっさんがだみ声で意味不明の口上を並べ、新聞は怪奇現象の号外を流す。あちこちで不思議な予兆が積み重なり高まったところで、パレードが始まる――と、町全体が物語に侵食されていく様にぞくぞくする。
しかも足かけ十数年。忘れた頃にやってきては何日もかけエピソードを作っていく雄大なスケール。かつて巨人に怯えた少女は二十歳過ぎの女性になり、キリンが去ってから生まれた子供は学校に通うようになっている。そしてまた街中に不思議な落とし物が現れると、人々は「巨人が来るぞ」とわくわくしている。今や神話は町の一部であり、同時に町も神話の一部である。ある男性のコメントはこの点を見事に言い表している。「これは終わることのない物語であり、町をひとつにまとめてくれる」
「自分たちで解釈をたたかわせる」という女性もいい。「まずエスプリがあって、大きさはそのあとだ」と語る青年もいい。「物語は人々の心の中に生き続けます」という演出家(添付冊子の抜粋インタビューより)もいい。誰も彼もが本当に凄くいい。センス・オブ・ワンダーってこういうことだ。
本編に舞台裏場面なし、メイキング映像特典なし(※『巨人の神話』の特典「古代史劇」はメイキングあり。「ボランティアにただ働きさせてないのが良い(大意)」というコメントが興味深い)。付録冊子もごくあっさり風味。詳細な資料を見たかったが野暮というものか。ともかく夢は続いていく。星五つ。