一部では「データの恣意的な利用(悪用)の例」として有名な本です。
データを並べ立ててさも科学的なように見せかけていますが、
「左利き」の定義が曖昧だったり、母数が少なかったりと、
かなり怪しいです。
左利きはさも異常者のように書いてあるように思えますが、
よく読むと「左利きは脳に(検査で見つけられない)
障害がある『可能性がある』」
という仮説にすぎず、確かな証拠があるわけでもありません。
本文中ではアリバイ(alibi)のali(どこか他の〜)から取った
「アリノーマル」という用語が使われています。
魔女の不在証明同様、「検査で見つけれらない異常」の不在を
証明するのはすごく難しいことです。
例えば「胎児のとき未知の物質YとZがA日間一定の割合になると左利きになる」
という説を「そんなもの見つかっていないからダメ」以外の理由で
否定する方法を考えてみてください。
さらに、「検査に使われたX線などで脳が傷つくこともあるから、
検査結果に問題がなくても、検査したこと自体が左利きの要因を作る可能性もある」
という記述まであり、ますます実証が難しくなっております。
ただし全く救いどころがないわけでもなく、
左利きの迫害の歴史あたりはまあ信用できるのではないでしょうか。
左利きが「迫害」されることによってストレスを受けるというのも、
幼少時の厳しい躾が元で発音障害やチックなど、なんからの不調を負った有名人が
何人もいますので(チャーチル、ジョージ5世、水森亜土、石原慎太郎など)
それほど間違った話でもないのでしょう。
これを読んで自分の周囲の左利きの存在に関心を持つならいいのですが、
純真な読者が「左利きは異常な障害者なんだ」と思い込まされる
可能性のほうが高そうなので、
左利きというよりこの本が「危険がいっぱい」です。
実際、そういう内容のレビューを書いて自分の読解能力の低さを露呈している
愚か者が1人いますし(笑)。
ちなみに原書のタイトルはleft-handed syndrome 「左利き症候群」です。
批判的読書の練習にはもってこいですが、左利きに関して知りたいのなら、
『見えざる左利き』や、軽いものなら『左ききのたみやさん。』の方が遥かに
いいですし、内容も面白いです。