かつて橋本治は、映画『E.T.』の大ヒットに際して
人々は異星人と人間との友情に感動することはできても、
自分たちの隣人に対しては理解しようとすらしないのではないか?
といった主旨の嫌味を述べていたと思います。
本書では住宅街に現れたゴミ屋敷の住人が主人公。
E.T.ではない主人公は住民たちから当然拒絶され、迷惑がられ、
市役所を通じてなんとか処理してもらいたいと思われる迷惑者でしか
ありません。著者はデビュー作『桃尻娘』を書いたときに
女子高生の内実はどうなっているのだろう?と考えていたら
「他人の中ににも人間が潜んでいる」そしてその「他人」とは
「他人」ではなくて「共通理解を可能にする人間という存在だ」
ということを発見したそうです。(橋本治『橋本治という考え方』より)
橋本治という考え方 What kind of fool am I今回はゴミ屋敷の住人の中に当然潜んでいるはずの「人間」を
描いていきます。この主人公の人生が語られる際の背景となっている
戦後から現代に至るまで刻々と変化していく昭和の描写は圧巻!!
またラストの「巡礼」の場面では神々しさすら感じてしまいました。
これを読んだ私は『E.T.』を観て感動するのと同じようには『巡礼』を消費はできないと
感じました。ふと見渡せば身近なところに理解すべき人間はたくさんいますから。