読後既に十年以上が経過していると思うが、何故か再読したいと思い続けさせる魅力を持つ俳句集である。川端茅舎は仏教に造詣が深いこと、松本たかしは能に通じ端正な俳句に特徴がある。なお、松本たかしは生まれながらに能役者の道を歩むべき運命の下にあったが、病弱のために諦めざるを得なかった。久しぶりに、著書を手に取り拾い読みをしてみた。いくつか俳句を引用しよう。
(川端茅舎)
夕紅葉我が杖月のかげをひき
蠅ひとつ良夜の硯舐ぶり居り
土不蹈ゆたかに涅槃し給へり
殺生の目刺の藁を抜きにけり
月の寺鮑の貝を御本尊
手鏡やみ空の鵯の声を追ひ
沈丁や死相あらわれ死相きえ
朴散華即ちしれぬ行方かな
(松本たかし)
羅をゆるやかに著て崩れざる
金粉をこぼして火蛾やすさまじき
芥子咲けばまぬがれがたく病みにけり
肘のせて窓に人ある芭蕉かな
この雨はつのるなるべし春惜しむ
病む我を頼みてあはれ妹の春
蜘蛛かなし脚つづめ死を真似るとき
夕待つ岐阜提灯の空かな
枯菊の相抱くあり倒れつつ
春眠の深くはなりぬ黄泉現つ