我が国では、戦後の高度成長期(1950〜1960年代)に大規模な捷水路工事(ショートカット)や築堤工事が行われ、全国の河川は大きな変貌を遂げた。
これにより河川の形態にも変化が生じている、河床低下が発生し、澪筋は固定され、生態系の多様性も失われつつある。災害防止や土地利用を優先した計画には必ずその代償がある。
本書は北海道の標津川における、工事により直線化された河川を蛇行河川へと復元する事業の「技術的な検討の要約」といえる。
この事業では直線化した河川と蛇行河川を連結し流路を二股にすることで、必要な河積断面を確保し、(1)防災と(2)環境復元の両立を図っている。これには連結部分に堰を造り河床高さを調整し、不均一な流水量を振り分けるという非常に繊細な作業が必要となる。モニタリングの継続とフィードバックの繰り返しも必要となるのだろう。
本書は流域における窒素循環、カワシンジュガイやドーベンコウモリの生態などトピックスは幅広い。その幅広さは、この河川について、全てを記述し切れないということを物語っている。
分断された蛇行河川では40年あまりの歳月を経て、新たに多様な生態系を構築しており、再蛇行化はその生態系の消失を意味する。このことは自然を改変することの業の深さを感じずにはいられない。