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崩れ (講談社文庫)
 
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崩れ (講談社文庫) [文庫]

幸田 文
5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

緑豊かな自然のなかで山が崩れ、河が荒れる。崩れ
その風景はなんと切なく胸に迫るものか。生あるものの哀しみを見つめる最後の長篇

この崩れこの荒れは、いつかわが山河になっている。わが、というのは私のという心でもあり、いつのまにかわが棲む国土といった思いにもつながってきている。こんなことは今迄にないことだ。私は自分がどんなに小さく生き、狭く暮してきたか、そしてその小さく狭い故に、どうかこうか、いま老境にたどりつけたと、よくよく承知している。──本文より

--このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

内容(「BOOK」データベースより)

山の崩れの愁いと淋しさ、川の荒れの哀しさは捨てようとして捨てられず、いとおしくさえ思いはじめて…老いて一つの種の芽吹いたままに、訊ね歩いた“崩れ”。桜島、有珠山、常願寺川…瑞々しい感性が捉えた荒廃の山河は切なく胸に迫る。自然の崩壊に己の老いを重ね、生あるものの哀しみを見つめた名編。

登録情報

  • 文庫: 206ページ
  • 出版社: 講談社 (1994/10/5)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4061857886
  • ISBN-13: 978-4061857889
  • 発売日: 1994/10/5
  • 商品の寸法: 14.8 x 10.6 x 1.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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By 紫陽花 VINE™ メンバー
形式:文庫|Amazonが確認した購入
著者72才の時の作品。安倍川の崖の崩落跡を見た事をキッカケに、「崩れ」に取り憑かれたような著者の自然への脅威・畏敬の念と、それに纏わる人間関係を練達した文章で綴ったもの。

とにかく著者は多くの崩落跡を良く歩く。第一印象が大きかったのであろう。科学的分析などでは無く、著者の見聞・印象を活写する。崩落現場だけではなく、行程上の樹木や水流や岩道なども木目細かく描かれる。崩落現場ながら、読む者に美しさを感じさせる程である。そして、崩落の原因にある種(地盤、水はけ等)の"弱さ"を感じたり、「崩れ」を描く事によって、その土地の人々が従来持っている人間関係の「崩れ」を固定してしまう事を恐れる(結局は描いてしまうのだが)。「崩れ」の観察旅行の帰り、娘夫婦の家を訪ねると、服装について心配される(著者はそれまで和服専門、旅行はズボン)シーンがあるが、著者は「崩れ」と自身の老いとを重ねているのではないか。 それにしても、著者の描写は瑞々しい。まさに少女のような好奇心と清新さ溢れる感性で、自然の峻烈さを映し出している。しかも、自然を"恐れて"いるのではなく"畏れて"いるのである。"木花開耶姫"の話も二回出て来る。後半は、崩落と言うより噴火や土石流の話になるが、これも広い意味での自然の「崩れ」であろう。

本書を単なる老人の「見てある記」と峻別しているのは、「崩れ」に焦点を当てて自然と対峙しているからであろう。自然の「崩れ」に着眼した文学者と言うのは珍しいと思う。著者と共に様々な自然の「崩れ」が味わえる貴重なエッセイ。
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10 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
「何も美しいもの、いいものだけが人を惹くのではない、大自然の演出した情感はたとえそれが荒涼であれ、寂寞であれ、我々は心惹かれるのだ」。72歳にして崩れを目にし、心の中の種が芽を出し幸田文。各地の崩れを取材し、自然とそこに生きる人々のくらしを淡々と語りながら自分を振り返る。一つ一つの景色のたしかな描写。引き締まった緊張感がある。
このレビューは参考になりましたか?
2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 左党犬 トップ500レビュアー
形式:文庫|Amazonが確認した購入
 われわれは火山列島に住んでいる住民なのだということを、しみじみと感じさせてくれる作品だ。

 文学者が書いた「崩れ」というタイトルからは、「崩れ」をメタファーとして語った文学作品だと予想していたが、意外なことに「崩れ」という自然現象そのものを文学者の眼でとらえた作品であった。

 随筆の名手であった幸田文が、なぜ「崩れ」という地質学上の現象に関心を抱いて、72歳(!)で全国各地の山崩れ現場を歩き回ることになったのか? 自分の「引き出し」のなかにあった「物の種」が突然に発芽し、内面からそれこそ火山活動のように湧き上がってくる衝動に突き動かされ、ものに憑かれたように全国の「崩れ」の現場を歩き回ったらしい。

 火山列島日本の土壌は全般的に柔らかい。大雨が集中して地盤が弱くなると崩れ、大雨が降らなくても火山灰でできた弱い地盤は崩れやすい。いったん崩れると、崩落した土砂は土石流となって下流域の居住地域を破壊する。長年かけて切り拓いてきた畑も人家も一気に流してしまう土石流。地面の崩れは人間生活そのものの崩れにつながってしまう。しかし、また復旧作業が終われば人びとはもとの土地に戻ってくる。こんな人生を、この火山列島の住人たちは有史以来、繰り返してきたのだ。

 わたし自身、高校時代から地学好きで、崩れの大本山である富士山も含めて数々の山にも登ってきたが、著者のように「崩れ」の現場に着目したことはなかった。何度も眼にしていながら、見ていなかったのだろうか。土石流の被害地のことも、どこかしら他人事のように思っていたのかもしれない

 この本を読みながら、なんだかわたしも急に「崩れ」が気になってきて、平地の住宅地の崖にも注意を払うようになってきた。この本にも、都心なのに裏山が崩れて生き埋めになった人の話がでてくるが、日本全国どこでも「崩れ」の犠牲者になる可能性があることに注意を払いたいものである。

 淡々としたしなやかな文章なのだが、読んでいくうちにものの見方が変わってくるのを覚えるようになってくる。日本人なら一度は読んでおきたい文章である。
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