おそらく岩木さん以外の方でカメラを持って、この地域に入って写真を撮影できる人は皆無であろう。比較できるのは、最近風景写真出版から刊行された窪田諭人氏の奥吉野の渓谷を撮影した「水の劇場」位のものであろう。この写真集は沢登りとフリークライミングの技術と十分な装備、撮影技術を兼備してなお、命の危険を顧みず、参学の究極を目指したいという強い意志がなければ成し得ぬ、自然の宝蔵を開き映像として昇華させ結実した成果である。文章表現も厳しいトレイルを体験したものでなければ表現しえぬ、迫力と緊迫感に満ちており、挿入されて絵と相俟って、鑑賞者の想像力を強力に掻き立てる訴求力があり、これほど見応え、読み応えのある写真集は稀有である。写真家を志す者ならなおさら、風景写真が好きな一般の人にも、是非見ていただきたい一冊である。