山で遭難した人間が生きていても死んでいても、救助隊の主人公の三歩(さんぽ)は必ず声をかけますね。「よく頑張った」って。たとえ遭難者であってもないがしろにしないその姿勢、気持ちの持ち方にグッときます。
三歩の台詞には身にしみる、素敵なものが多いのだけれど、そんな中からひとつ、紹介させてもらっちゃおう。三歩の姉の千歩(ちほ)に、「山で怖い目にあったりしないの?」と訊かれて答えた時の台詞。≪うん。怖いけど・・・・・・。それと向き合わないのは、もっと怖い・・・かな。≫(「遊子(ゆうし)」より)
第1巻、第2巻にも増して、心にしみる話がいっぱいあった第3巻。「アタック」「遊子」「警告」「オトコメシ」「乾杯」「押し花」「プロフェッショナル」「バナナ」「父親」の、全部で九つの作品が収められています。なかでも気に入ったマイベスト3は、次の話かな。
◎「オトコメシ」・・・・・・遭難した父親と、まだ小さい息子との心の絆の強さを描いた作品。息子が握ったおにぎりが、ポロッと転がり落ちる場面。たまらんかったです。
◎「バナナ」・・・・・・病院の待合室で、三歩とおばあちゃんが出会うところから、話が滑り出して行きます。ラストの見開き二頁の景色と眼差しに、乾杯!
◎「父親」・・・・・・遭難してから半年経っても行方不明の息子を探す両親。山に登って、無事に下山することが、どんなに大切なことか。それを身にしみて教えられた作品です。山で命を落とした人への鎮魂曲ともいうべき話に、強く心を揺さぶられました。