「岬」は姉を中心とした話、「臥龍山」はあの父親の話。「藁の家」もいつもの路地を中心とした話だ。
「修験」「化粧」「重力の都」は紀州・熊野の荒くれ男のストーリーである。
中上健次の作品は南紀の強い日射しと多雨、海山川などの自然、そして路地の荒ぶる男達の労働や日常が繰り返し繰り返し描かれる。主人公が変わり、時代が変わっても、根底に流れているのは亡兄の鎮魂のための念仏なのではないかと思えてしまう。供養のための調べが終わりなく繰り返されているのではないだろうか。
しかも荒くれ者で女をもののように扱う彼らの生活は、実はしっかりものの女達によって支えられている。女系家族の中のやんちゃ坊主と言う印象さえある。主人公は胎児であり、山と河と海とにはさまれた狭い土地、つまり母親の胎内に包み込まれていて、そこから生まれ、外にでていくのだが、繰り返しそこに帰って来るのではないだろうか。