岩崎弥太郎。乱世に頭角を現す強い個性とカリスマ性。そのエネルギ−の根源は、極貧というコンプレックスとそれをバネにした強烈な上昇志向である。生来の好戦的性格がそのベクトルをさらにパワ−アップさせ、長崎での土佐商会での実績、明治後の三菱商会による海運事業の成功へと導く。しかし、出る杭は打たれる。明治14年の政変で、時の薩長専制政府の主である伊藤博文から大隈重信の資金源とされ、政治的に三菱を葬り去るべく作られた政府出資の共同運輸会社と泥沼の死闘を演じる。「強烈な上昇志向で壮大な夢を語れること。そして強靭な忍耐力。」これが企業家スピリット。
岩崎久弥。強烈個性の兄とは一味違う大局的展望に立った冷静な判断力。共同運輸との死闘の最中に逝去したを兄・弥太郎の後継として、大いなる決断で事業をリセット、三菱から主力の海運業を分離することにより政治的難局から脱し、新生三菱の創生を多角経営に求め、近代的なビジネスとして7年で三菱流ガバナンスを確立し、後の三菱財閥の礎を築いた。そして若干42歳で弥太郎の長男・久弥に三菱を譲る。なんと鮮やかな禅譲か。
本書には、大きな仕事を成し遂げる大起業家が心すべきこと。また、その事業を発展させるための二代目や側近のなすべきことが多く語られている。