表紙に載せられている作品の迫力に惹かれて購入したが、期待に違わぬ内容で引き込まれた。
その表紙の作品は「山中常盤」。古浄瑠璃に題を撮った、義経の母・常盤の悲劇と息子によるすさまじい復讐の物語だ。胸に剣を突き立てられ息絶える常盤や、義経に首をはねられたり真っ二つにされる盗賊たちのありさまは、表紙以外に口絵などにも収録され、くぎ付けになってしまった。
この作品を描いた人物こそが岩佐又兵衛。父は戦国の城主だが、父が信長に背いたため幼くして母を殺され、自らは絵師となったという、「山中常盤」を地でいくような数奇な人生を送った人物だ。この作品以外に、当時の風俗なども綿密に描いており、そのため菱川師宣に先駆けて「浮世絵をつくった男」とも評される。
さまざまな形で人間の情念を描き、何世紀もの時を経た今でさえ見るものの情念を揺さぶる男の世界に導く入門書としてお奨めする。