敏子さんの甥である著者による、太陽の塔の成立と、万博というイベントにあってそれが有していた意義と特異性について考察することで、昨今再び脚光をあびる岡本太郎の人となりを紹介した新書です。ただ、途中に差し挟まれる生い立ちなどは簡略化に過ぎるきらいが無きにしもあらずで、白紙の状態で本書を手にした人が、ここから思い描く岡本太郎像には一抹の不安が残りますし、随所で用いられる「太郎さん」は、身近にいたからこそ見えなかったといった類いの、対象化の不足を露呈しているように思えました。厳しいことを書きますが、岡本太郎についてなにかを知ろうとすれば、その著作や作品に直接触れてみるのが近道だし、手っ取り早いように思います。しかし、「縄文の発見」をはじめ、岡本太郎は生前、優れた解説者ではありましたが、その反面自らの在り方や作品については、晩年の道化に徹した姿も含めて、解説や要約を拒むというのが一貫した彼の姿勢であり覚悟であったと思えてなりません。