岡本太郎という方に関しては 2003年頃の東北新幹線の車内誌で 彼が撮った白黒の東北の写真を見て以来 興味があった。今思うと その記事も 赤坂が書いていたような気がする。そんなわけで本書を読む機会となった。
まず 岡本が パリで得た「視点」で日本を見るに際し 初めに京都・奈良を否定した点に感銘を受けた。
和辻哲郎の「古寺巡礼」や 亀井勝一郎の「大和古寺風物誌」に親しんできた僕として 日本の独自の文化を考える際には まず奈良を考えてきた。但し 考えてみると 奈良の文化はその当時のほんの一握りのエリートたちが享受していた「上澄み」であることに今 思い当たる。そんな「上澄み」だけで日本を理解することはできないという指摘を 岡本から受けた思いだ。
次に岡本が 芸術家にして民族学者でありえたという点に驚いた。
岡本というと「爆発芸術家」というイメージしか無かっただけに 本書で描かれる岡本のもう一つの顔に驚いたのである。
本書を読んだ後で 例えば「太陽の塔」を想ってみると 確かに あの不思議で強烈な姿には縄文時代が香り立つ。
逆に言うと 民族学者が扱っている様々な素材は 既に「芸術」と紙一重なのではないかとも考えられるのかもしれない。少なくとも 岡本は パリでモースやバタイユから学んだことが 彼のその後の芸術に「見えている」点に 凄味があるとすら思う。
こういう岡本を「発掘」した点が 著者の手柄であることは言うまでもない。赤坂の 幾分情緒的な文章は相変わらずだが 対象への思い入れを感じさせる好著だ。