冒頭には単行本未収録の短編漫画が2編収録されており、うち1編は初出不明の発掘もの。この時点でコアな岡崎京子ファンには買い、と言えるが、ほかにも岡崎京子のインタビューやテクストが多数再録されていて魅力的。美しく詩的な文章から、スッパリとした受け答えのインタビューまで、幅広く岡崎京子の言葉をたのしめる。漫画とセットになった対談「女のケモノ道」の、肩の力がぬけた中に鋭い視点が見え隠れするおもしろさなどは、実に岡崎京子らしい。
また、岡崎京子とその作品について、吉本ばなな、宮台真司、椹木野衣が、それぞれインタビューに答える、という企画も本特集の1つの柱になっている。それはもうたくさんのキーワードが次々と飛び交う3者の岡崎論。彼らの言葉の奥に、さまざまな観点から読み解くことができる岡崎作品の、重層的な魅力が浮かび上がっている。「同時代的な作家」とよく言われる岡崎京子だが、実はそれだけではなく違う時代や環境の中で生活していた人間にとっても普遍的に刺激的な存在であることを、改めて感じさせてくれる。
岡崎京子の漫画に触れ、なんらかの強い印象を受けたことのある人にはおすすめできる1冊。そして、読んだことのない人も、さまざまな書き手の思い入れたっぷりの文章や対談を読めば、きっと岡崎作品を手にとってみたくなるはず。(横山雅啓)
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個人的には吉本ばななのインタビューに興味を持った。『リバーズ・エッジ』が傑作ではない、という指摘は本作発表後しばらくの期間を経て多くの論者が指摘するようになったことではあるが、吉本がここまで断定的に論じたというのは衝撃的である。私は吉本の意見に同調する部分もあるが、『リバーズ・エッジ』が駄作であるとは思わない。『リバーズ・エッジ』は、ある種の普遍性を持っていたがために、時代を経るにつれその衝撃の度合いが必然的に希薄なものとなるという逆説的な運命を持っていた作品だったと考えている。ただ、いずれにしろ、吉本の意見は全体的に見て、新鮮であり興味深い。
吉本のインタビューとは対照的に、読了後ある種の違和感を覚えたのは宮台真司のインタビューである。「ダウナー系まったり」などの独特のタームを駆使して岡崎の作品を語る宮台であるが、私には彼の理論があまり的を射ているとは思えなかった。「あえてする」という文脈で岡崎の作品を論じるというのは理解できるが、ACの議論にまで踏み込んでしまったのは行き過ぎであろう。少なくとも私には上野千鶴子より宮台の理論の方が「凡庸」に感じられた。
また、本作には岡崎京子の稀少な作品も何点か収録されている。その中で抜群に面白いのは「女のケモノ道」である。このようにフェミニズムを自分のものとして消化できるのは才能であると思う。『負け犬の遠吠え』の公刊よりもずっと前にこのような作品が存在したという事実を私たちは記憶しておく必要があるだろう。
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