安藝国の地方国人として大内・尼子の二大名の狭間で生き抜こうとする毛利元就とその妻・おかたの物語。下剋上・弱肉強食であった戦国時代において生き抜くためにはかなり悪辣なこともしなければならなかったことに気づく。元就も例外ではなく、騙討ちまがいのことを何度も何度も経験して自らの地位を築きあげていっている。
血の匂いのしない歴史小説が多いなか、このどろどろとした血なまぐささが僕としてはとても心地よい。それでいてまったく嫌悪を感じないのは永井路子の筆力である。世の中はけしてうつくしいものばかりに囲まれているわけではない、おぞましいものもおそろしいものも隣合わせなのだということに改めて気づきながら、僕は山霧が晴れるような気持ちで本を閉じた。