本書は、山県有朋に視点をおいて、明治・大正期の政治を概観している。記述は平明であり、とくに高校生にお勧めしたい。明治期の政治史は、藩閥、政党、官僚、軍部などがそれぞれの思惑から複雑な動きを見せ、理解にやや困難があるが、本書を読めばそれらについて、明確なイメージを持つことができるだろう。
ただ、本書を読み進めるにあたって注意すべきことがある。筆者は本書のいたるところで山県有朋の心境を忖度するのだが、それが根拠――例えば日記や書簡――に基づくものなのか、筆者による解釈なのかが不明な点である。ある場合は、筆者は史料を引用し、ある場合はしない。史料を引用しない場合、史料がないので引用しない(=出来ない)のか、史料があるが引用しないのか、読者として判然としないのは不満である。とはいえ、さらなる読書へむけた道案内としては十分、その任を果たしている。