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主人公は山田太郎であるが、語り手は山田太郎ではない。七つ連作集からなりたっていて、うち五つはそのときどきで山田太郎と「かかわるはめになってしまった」女たちが語り手、あるいは女たちの視点で語られる。
この女たちがことごとくステレオタイプな女で、彼女たちの内省や洞察など、じつに底浅くぜんぜんおもしろくない。しかしそこに山田太郎がかかわってくるとーこの男、名前からしてとらえどこのない奇怪な男なのだー女たちはステレオタイプでいられなくなってしまう。ときに山田太郎にたいして殺意をおぼえたりしながらも、それでもなぜか避けるよりもかかわろうとしてしまう。
この小説のおもしろさは、女をひきつけつつも怒らせたり不快にさせたりばかりする山田太郎のとらえどころのない人間性にあるのだが、そのとらえどころのなさはテレビドラマで類型的にえがかれるような女たちの視点によって際立つ。
けれどもぼくは、本当はこの小説は逆のことを描いているのではないかと思った。つまり山田太郎というとらえどころのない人間によって、類型的であることの奇怪、人間は誰しも山田太郎のような異様さがあるのであって、類型的ではいられないということをあぶりだしているのではないか、と。
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