鳥居氏の該博な史料渉猟、史料の行間の空白を埋める想像力の確かさは、かねてから敬服している。
国粋主義、教条主義、いずれのイデオロギーにもとらわれない史観の確かさは、随一と言って良い。
しかし、本書のテーマは既に「昭和二十年第一部12 木戸幸一の選択」で述べられている
ことである。
それをさらに補足・増補しようという著者の試みは尊いことである。
確かに、本書によって山本五十六の開戦回避工作の輪郭が、前著より一層明らかになった。
しかしその一方で、木戸幸一の「意識的不作為」についての鳥居説は、既に何度も披瀝されている。
「昭和二十年」という、大河年代記の愛読者とすれば、補訂は「昭和二十年」続巻上でしていただき、「まずはライフワーク『昭和二十年』完成に専心を!」と申し上げる意味で★五つである。
同時に、この本ではじめて鳥居氏を知る読者には、日本版「ローマ帝国衰亡史」ともいうべき、
「昭和二十年」通読を、是非とも薦めたい。