角川文庫の本格ミステリ・アンソロジーでは、有栖川有栖、北村薫、法月綸太郎に続く一冊。密室ものからリドル・ストーリー、幻想SF小説風味の作品まで、「本格ミステリ」を広義に捉えて選ばれた短篇の数々。さすが、色んなミステリ短篇を読み、独自の見識を持っている作家だけに、ユニークで面白いミステリ・アンソロジーになっているなあと、楽しく読ませていただきました。
「リドル・ストーリーの饗宴」の章では、作品を読む前の【解説(前説)】と、読み終えた後の【後説】のふたつが掲載されているんですね。作品のネタをバラさない気遣いと同時に、「というわけで云々」「さて、いかがでしたか」という、読み終えた今だから話しても大丈夫だよねとする文章が置かれている。こういうところが気が利いていて、楽しかったですね。
収録作品のなかで面白かったのは、次の四つ。
全編、道化師ずくめの不思議の国の殺人。犯人が分かった後の展開に、特に妙味を感じた・・・・・・ジェイムズ・パウエル「道化の町」
集中、随一の名品。さりげない伏線と終盤の展開に、「おおっ!」と唸った・・・・・・P・D・ジェイムズ「大叔母さんの蠅取り紙」
リドル・ストーリーの古典三大名作のひとつ。再読になるけれど、やっぱり面白かった・・・・・・クリーヴランド・モフェット「謎のカード」
奇妙な味系統の、幻想的な風味のある一品。この短篇を最後に持ってきた編者の勇気を称えたい・・・・・・J・G・バラード「マイナス 1」