1994年、ルワンダのジェノサイドが起きたとき、著者のアニック・カイテジは14歳だった。母親は目の前で頭を割られ、銃剣で胸を突き刺されて殺された。姉弟と従姉妹たちは民兵に森に連れて行かれて山刀で切りつけられた。ただ一人生きて帰ってきた姉のアリーヌは顔がはれ上がり、眼帯をし、片方の耳が削がれていた。
紛争終了後、アニックは姉とともにフランスへ渡るが、幸せな生活が始まったとは言い難かった。里親はフツ族の牧師夫妻で、夫のレイモンはロリコン野郎だったのだ。たまらず、アニックは判事に境遇を打ち明け、そこを逃げ出す。(後にアニックはレイモンを告訴する)。二番目の里親のデプレ夫妻は四人の実子の他に三人のヒンドゥ教徒の子供を受け入れて育てているが、報奨金が目当てで、実子以外の子はぎりぎりの教育しか受けさせてもらえない。アニックと姉がルワンダへ帰国する話が持ち上がった夜、夫妻は相談する。「ふたりが帰国しちゃったら、この家の家賃、どうやって払うのよ?」
そしてルワンダへ帰国するたびに蘇る悪夢……。軍靴の音が聞こえるたびにぱっと逃げ出してしまい、震えがおさまらなくなるので、200メートルも外を歩けない。母を殺した殺人者の裁判に出席し、証言を行うが、証拠不十分で罪にならず釈放されてしまう。
現在、アニックは恐怖を克服し、ルワンダでカガメ大統領夫人が率いる組織「PACFA(Protection and Care for Families against HIV/AIDS)」の活動に参加し、ルワンダ゙再建のために尽力しているとのこと。
大虐殺が起きてしまったのは確かなことで、その生き残りと、殺人者がいて、両者は同時に生きており、これからもルワンダで暮らしていく。それも確かに現実に起きていることなのだ。