たまたま機会があり、この写真集発刊を記念した写真展初日に開かれたパーティに出ることができました。ですから、このレビューはプラスのバイアスがかかっている、かもしれません。
日本の山岳の特徴は、3000m級の高山のすぐそばに大都市が広がることです。そのため、自然写真としての山岳写真家は、いかに人工物を排除するかに、頭を悩ませてきました。この作品を見て驚いたのは、彼らが取り除こうとしていた人工物を、むしろ積極的に対比し、融合するものとして写し込んでいることです。
夜の山から見る街の灯の、星の、月の、なんと幻想的なことでしょう!
パーティに同席したある山小屋の主人は「この写真集はね、俺の気持ちと同じなんだよ。何日かお客が誰も来ない日が続いた夜、山の上から街の灯を、何とも言えない気分で眺めるんだよ」と教えてくれました。ナルホド!
菊池さんが壇上から紹介したこの写真集に関わったスタッフの多くが女性でした。さらにナルホド!!
「奥大日岳と富山夜景」という作品は、立山連峰北西部・奥大日岳の肩越しに富山平野の灯りを写し込んでいます。標高2611mの夜の山がこれほど写り、街の灯が輝いているなんて…美しい……。しかし、よく観察してみると、月光と一面の雪斜面の反射を使って奥大日岳を浮き上がらせていることがわかります(でないと山は漆黒となってしまいます)。そのためには、厳冬期の晴れた夜で、月の角度がぴったり合う日時でなければ撮影はできません。いったい何日挑んだことか?? 女性好みの甘いシーンだと思ったらだまされる(笑)。またまたナルホド!!!
パーティでは評論家・飯沢耕太郎氏が「また山岳自然写真が見たくなった、新しい世代の登場」、シンガーソングライターのみなみらんぼう氏が「新しい山岳写真の世界を切り開いた」と評価していたのが印象的でした。それは、おそらく写真展を見た人々が同様に感じたのではないかと思います。