本書を読んで感じたことは、人々が生活をする上で
山にある資源(木、竹、漆、砂鉄、野生動植物など)が
かつては欠かすことのできないものであり
そうした資源を製品化・商品化するさまざまな業態の
「山に生きる人びと」が存在し、いかに多種多様に
その資源を活用してきたか、ということへの驚きである。
現在私たちが「山で働く人びと」を数え上げてみた場合
思いつく業態はそう多くはないのではないだろうか?
それがなぜかと考えれば、ライフスタイルや社会構造の変化と
工業製品の多くなったことが挙げられると思う。
丁寧に手作りされた竹製のざるとプラスチック製のざる
漆塗りされた漆器と合成樹脂系塗料で漆器風に作られた器
その良さと違いは歴然としていても
生活をする上でどうしても安い物に手が伸びてしまうのは
致し方ないことだし、その結果として
山で生きられなくなった人びとが里や街で
生きるようになっていったのはしょうがないことだと思う。
がしかし本書を読んで、山を活用して生きてきた人びとの姿に
憧憬にも似た気持ちを感じるのはなぜだろう?
山で生きるには大変なことが多かっただろうけれど
だからこそ力強い生命力、生活力を感じる。
おそらくそうした人間としての強さに惹かれるのだと思う。
宮本常一氏の著書はどれも読みやすく、示唆に富んだ内容だが
本書はその中でもとくに好きな一冊です。