ところが、日本の展覧会カタログは、厳密には「書籍」には該当しない。著作権法第47条の規定によると、展覧会カタログは「観覧者への展示作品の解説・紹介を目的とする<小冊子>である」とされており、その販売は原則として会場内のミュージアムショップだけに限られる。ごく少数の例外を除けば、一般書店で購入することも図書館で閲覧することもできないし、長引く不況による制作予算の減少、学芸員の置かれている厳しい労働環境、情報収集・保存体制の不備なども合わせて考慮すると、展覧会カタログを取り巻く環境はお世辞にも恵まれたものとは言えまい。
その点、さまざまなタイプの展覧会カタログを多角的に紹介した本書の意義は大いに貴重なものだ。編著という性質上、扱われる素材は当然に多岐にわたっているのだが、困難な状況下にあって数多くユニークで優れたカタログが刊行されている事実を知るにつけ、欧米諸国に比べて大幅に立ち遅れていることは否めないものの、日本の美術館・博物館もまだまだ捨てたものではないと思わず安堵させられる。
あえて欲を言えば、タイトルで「愉しみ」をうたいながら大衆的なエンターテイメント色の強い展覧会の話題に乏しかったことと、ブックデザインの専門家の視点からカタログを扱った本格的論考が含まれていないのはやや残念に思われた。この2点についてはまた別の立場から掘り下げた書物の出現を期待したい。(暮沢剛巳)
登録情報
|
この商品にタグをつける(詳細)タグは、商品との関連性が非常に強いキーワードまたはラベルのようなものです。
タグにより、すべてのお客様がお気に入りの商品の整理と確認を行うことができます。 ※タグは初期設定で公開になっています。詳しくはこちら |
|
あなたの意見や感想を教えてください:
|
||||||||||||||||||||||
|
最も参考になったカスタマーレビュー
6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
カタログ好きは楽しめる。,
By
レビュー対象商品: 展覧会カタログの愉しみ (単行本)
意外に軽い本です。出版元といい判型といい、学術的な本かと思って読みましたが、別に統計や考察が網羅されているわけではなく、あくまで、展覧会カタログを“愉しむ”本です。大部分は、いろんな人が寄稿した展覧会カタログ“書評”で構成されていて、それぞれ、展覧会-カタログ-鑑賞者(=筆者)のスタンス、愛情が反映されていておもしろい(基本的に、おもしろかった展覧会・カタログをネタにしているので不愉快な批評はない)。私自身は、絵は会場で見るもの、カタログは買う必要なし、解説は美術書で、との信条でしたが、この本を読むと、カタログには独特の企画意図が反映されている(ものもある)ようで、読みたい、コレクションしたいという気持ちになりました。 くどいですが、意外に軽い本です。もっと値段も安く、ポップな造本で出版してくれたらもっと広く読んでもらえるのに残念。
1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
サロン・ド・テ風論文集。,
By オハラ翔子 (ボストン・マサチューセッツ) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 展覧会カタログの愉しみ (単行本)
展覧会に行くと素敵なカタログが入口あたりにおいてあります。つい手にとって、3000円ぐらいだけど、まあ記念に買っておこうかな?と買ってしまって、家の本棚の片隅に何年も置きっぱなしになってしまう。でも何年か経つと、それが意外に貴重な書物になっていたりする。
おもしろい企画の論文集です。執筆者もなかなか気鋭の若い研究者を揃えてそれぞれの専門からそれなりの面白い見解をわかりやすく読み易く解説してくれています。下のレビュアーのおっしゃる通り、軽く読めてちょっと午後のお茶の時間などにぴったり。展覧会カタログってこんなに奥が深くて面白いものだったんだ〜!って感じの一般教養的なお勉強になる一冊です。
あなたの意見や感想を教えてください: 自分のレビューを作成する
|
|
|
|
|