山下が「展覧会の絵」を編曲、演奏してからすでに30年近い年月が流れたが、当時「絶対に誰にもマネできない唯一無二の演奏」であると確信すると共に、、「ひょっとしたらいつかは山下を凌ぐようなギタリストがこの地球上のどこかから現れ、山下編の「展覧会の絵」を完璧に弾きこなす日が来るかも知れない」とも思ったものである。しかし、現在まで一人のギタリストもこの曲にチャレンジすらしていないように思われ、少なくとも公の場で演奏したという話は全く聞かない。
それにしても山下のギターは尋常では無い。余りにも技巧が物凄すぎて、音楽性に疑問を投げかける人が少なくないのもこのギタリストの特徴である。私見によればこの「疑問」は的外れである。山下の演奏に音楽性が無いのではなく、既存の楽曲では山下の演奏技巧と表現力を満たす程のエネルギーを持ち合わせていないために、山下の技巧が楽曲に勝ってしまい、楽曲の方が霞んでしまうのである。
しかし、この「展覧会の絵」は楽曲と山下の演奏技巧・表現力が見事に合致した数少ない例と言える。この曲は元々ピアノ独奏曲であり、数々の技巧派ピアニストが取り上げて来たが、改めて山下のギター版に軍配が上がると断言する。ダイナミズム、スリス感、音色の多彩さ等、山下の演奏が見事にこの曲の持つ「音楽性」を表現している。
このところ山下は「苦戦」しているように見える。それは、山下の演奏力、表現力を満たすような楽曲に巡り合えていないからである。歴史の浅いギターという楽器の世界に30年前に突然変異的に現れた山下は未だに「異次元の天才」であり、その音楽性と表現力は「ギター」という楽器をも超えている。
遠くない将来、この「展覧会の絵」のような、山下が持つ演奏力、表現力と「幸せな合致」を実現できる楽曲に巡り会い、素晴らしい「音楽」を聴かせてくれる事を祈って止まない。