大正時代の小説。復刻版。
乙女チックですが、詩的で、文章、物語が楽しめます。
やや自虐的な章子が、同じ寄宿舎の屋根裏部屋の隣人、美人でクールな秋津環に想いを寄せる物語。
なお、監修は嶽本野ばらです。註も面白いです。
<本文から。以下、長くなりますが、こういった文章も美しく思います>
(屋根裏)
この一つの語彙のうちに、章子は溢れるような豊富な、新鮮な、そして朦朧とした幽暗と、そして(未知)に彩られた奇怪と驚異と、幼稚な臆病な好奇心と――の張り切れるほどいっぱいに盛り上げられて充満しているのをその一刹那から感じた。その観念の前に(屋根裏)の語音は、非常に魅力ある巧みな美しい響きを伝えるものとなった、そして美と憧憬とを含んで包む象徴的の韻を踏ませてゆくのものとなった。
たとえば、(薔薇の花)――(珊瑚樹)――(初恋)――(・・・・・・)・・・・・
ああ、若者達の多くの幻想を寄せるに、ふさわしいこのあまたの数々の抒情詩集の中から引き抜かれた言句にも優って更に深くつよく若い心をき乱す如き心憎くも幽遠な響と感じを発するものと――章子にはなったので。(本文から)
是非、大正時代の日本の良さ?を感じましょう。