出版社/著者からの内容紹介
を熱狂させたWBC日本代表チームの活躍はいまだ記憶に残るところ。
日本代表は、確かに世界の頂点に立った。しかし、世界一を単純に喜んでいいのか?
なぜならば、日本代表には多くの問題が潜んでいた。
あの感動の世界一から一年...。王監督、イチロー、松坂をはじめとするV戦士
たちが、その舞台裏を、それぞれの視点で語り始めた......。
なぜ、多くの出場辞退者が出たのか? 日本代表チームにはいかなる問題があっ
たのか? いくつもの障害を、どこで誰がどのようにして解決していったのか?
日の丸に対するそれぞれの思いとはいかなるものだったのか? そして北京五
輪へと続く日本代表のあるべき姿とは?
韓国に敗れた屈辱の夜、キューバを下し世界一となった歓喜の夜、そして知られ
ざる真実......。
気鋭のノンフィクションライター、石田雄太が、王監督、イチローをはじめとす
る数多くの証言を通して、マスメディアでは、決して報道されることのなかっ
た、舞台裏の知られざる真実を深く細やかに綴っていく。
内容(「BOOK」データベースより)
著者について
ベースボール・ライター。1964年、愛知県生まれ。青山学院大学文学部卒業
後、NHK入局、「サンデースポーツ」などでディレクターを務める。92年に独
立し、「Number」「週刊ベースボール」「週刊プレイボーイ」など、雑誌、専門
誌、新聞などに多数執筆。数多くのスタジアムに足を運び続ける圧倒的なフィー
ルドワークから培った深い洞察力から紡ぎ出される文章は、多くの野球ファンか
ら支持を得ている。また、執筆のほかにスポーツ番組の構成・演出なども手がけ
るなど、精力的に活動。著書に『イチローイズム--僕が考えたこと、感じたこ
と、信じること』、『こんなプロ野球が見たい』、『イチロー、聖地へ』、『桑田
真澄--ピッチャーズバイブル18 』がある。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ベースボール・ライター。1964年、愛知県生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大学文学部卒業後、NHK入局、「サンデースポーツ」などでディレクターを務める。92年に独立し、「Number」「週刊ベースボール」「週刊プレイボーイ」など、雑誌、専門誌、新聞などに多数執筆。数多くのスタジアムに足を運び続ける圧的的なフィールドワークから培った深い洞察力、プレイヤーからの厚い信頼感、そして野球への限りない愛情、それらが紡ぎ出す文章は、多くの野球ファンから信頼と支持を得ている。また、執筆のほかにスポーツ番組の構成・演出なども手がけるなど、精力的に活動(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
抜粋
陽が落ちても小雨が降り続いていた、松の内のとある夜。東京・六本木の狭い
路地に、一台の車が入ってきた。
乗っていたのは、イチローである。
待ち合わせの時間よりも二〇分ほど早い到着だったのだが、イチローは店
に入ろうとせずにこう言った。
「このまま外で待ってた方がいいんじゃないですか。ちょうど雨も上がったよう
だし......」
傘を閉じたイチローは、人通りが少なかったとはいえ、それでも人の往来が絶
えない六本木のど真ん中に佇む小さな鮨屋の前で、寒風に肩をすぼめた。五分く
らい経っただろうか。イチローが突然、素っ頓狂な声をあげた。
「寒ーいっ」
すると、鮨屋の中にいた人から突然、声を掛けられた。
「あれっ、監督はもう中でお待ちですよ」
「えーっ、なんだ、そうだったんですか」
イチローは、慌てて鮨屋の暖簾をくぐった。すると、カウンターの席には、イ
チローが十ヶ月ぶりに会う懐かしい相手が座っていた。
王貞治監督だった。
WBCの決勝翌日、サンディエゴで握手を交わして別れてから十ヶ月。王
監督とイチローは、ようやく再会を果たした。胃の全摘手術を受けていた王
監督だったが、イチローを馴染みの鮨屋に招いて食事をともにしようということ
になったのだ。
「ご無沙汰しています」
「やっぱり外にいたのか」
「あの、でかい声が聞こえましたか(苦笑)」
カウンターに並んで座った二人は、ビールのグラスで乾杯した。
「いいから、呑んでよ」
「そういうわけにはいきませんよ(笑)」
「いや、オレも呑めるんだよ、少しならな」
王監督は、ビールのグラスを呷り、美味そうに鮨をつまんでいた。王監督の
元気そうな姿に、イチローは嬉しそうだった。
「監督は若い頃、走り屋だったんですか」
「うん、暴走族だよ。ハンドル握ると人間、変わるんだから。ホントの自分に
なっちゃうんだよ、そこのけそこのけって(笑)」
「へーっ、暴走族なんだぁ。それは、いいこと聞きましたよ(笑)」
イチローは、はしゃいでいた。
いや、正確に言えば、緊張を隠すためにはしゃいでいるように見えた。亡く
なった仰木彬さんと一緒のとき、イチローは恩師に対して親愛の情を示すため
か、いつも悪態をついて見せた。やはりイチローが尊敬する山田久志さんと一
緒のとき、イチローは先輩に敬意を表し、礼を尽くそうと気を配った。王監督と
鮨をつまむイチローは、今までに見たことのないイチローだった。
<序章より抜粋>