☆こういう性格の映画には滅多にお目にかかれない。それだけに喜びと衝撃度も遥かに大きい。宗教色も非常に強く正直、難解にして複雑、晦渋的な映画だが、様々な解釈ができる興味深いテーマ性、特異な映像表現、地味でありながら圧巻のカメラ・ワーク、不気味で身の毛がよだつような画面構成にはとにかく圧倒されっぱなしだった。ポーランドの作家ヤロスワフ・イワシキェウィッチの短編小説、『天使たちの教母』を基に映画化。作品の舞台は17世紀のポーランド。辺境の寒村の一堂に建てられた尼僧院の院長を勤める清楚で美しいヨアンナ(ルチーナ・ウィンニッカ)に謎の悪魔が乗り移る。悪魔に身も心も支配されたヨアンナは傍若無人に振る舞っていた。その悪影響で十数人の修道尼が狂乱のヒステリー状態に陥る。そんな暗中模索な異常事態を見かねた教会が調査のためにガルニエツ神父を現地に派遣。だが、あろうことかヨアンナと肉体関係にあった事が発覚。性欲と誘惑に負けたガルニエツ神父は無情にも火刑に処される。新たに後釜として大司祭はスリン神父(ミエチスワフ・ウォイト)を尼僧院に派遣した。敬虔な祈りをすませた謙遜なスリン神父は悪魔払いの儀式に備えヨアンナとともに苦行の日々を過ごす。無論、深い絆に結ばれていく。そして、ヨアンナの心の奥底に潜む痛ましい苦悩を知る。当初は悪魔との対決を前に躊躇していたスリン神父は我が身の命を賭けて、全身全霊で悪魔に戦いを挑む!。という、誠に恐ろしい驚嘆の物語で、神と悪魔の神話世界や宗教戦争の構図を思わせる描写も見受けられますが、背景には第二次世界大戦の無惨な傷跡や迫害、抵抗感、反戦メッセージ、ドイツ帝国=(ナチス)やソ連のスターリン弾圧政権に対しての批判と怒りがこの作品に込められていると推測できます。『戦争の真の終わり』や『影』等の名作で知られる、ポーランド映画の名匠、イェジー・カワレロウィッチ監督が大胆にして綿密な演出で描き、何とも言えない凄まじい戦慄と恐怖感を煽る。賛否両論=前代未聞のクライマックスもやりきれない気分になる。酷列で緊張感たっぷりの厳しい展開でありながら、優美で神秘に満ちた格調高い重厚な雰囲気には感嘆=感服致しました。人間の本質に隠された善と悪の定義、キリスト教や聖書にまつわる意味深いお話も所々に挿入されている。主人公の尼僧ヨアンナを演じたルチーナ・ウィンニッカと、スリン神父役のミエチスワフ・ウォイトの2人が見せる芝居=演技を超越した?前人未到にして白熱の真剣勝負には相当、度肝を抜かれた。間違いなく世界映画史上の歴史に残る最高の大名作です☆。