新潮新書からまた異色の仏教本が出た。パーリ語原典の研究がご専門の気鋭の仏教学徒が、自己の尼僧時代の経験についておもに書き綴っている。とても面白い。
世間にもいろいろとバレてしまっている男僧社会のグズグズぶりにくらべ、高潔そうなイメージのある尼僧たちについて、いやリアルはこうですよとそのダメっぷりを描き出しているのが本書の真骨頂だろう。しかも、単にグチに流れるのではなく、要所要所に著者の仏教に関する豊かな教理的・歴史的知見による補足説明がなされており、こちらも非常に勉強になってよい。
類書として、曹洞宗の尼僧寺院をフィールドワークしたPaula Kane Robinson Arai 「Women living Zen」(1999年)などがあったが、ガチな研究書だし、やはり尼僧というマイナーな存在たちの文化的素晴らしさを称える傾向が強い感じであった。まあ、そういう面も当然あるのだろうが、所詮は人の世、きれいごとでは語れない事実がたくさんあるのだろうと思っていた。
本書は、著者がみた、できるだけありのままの尼僧の姿をとにかく克明に記述していて貴重である。尼僧志願の「仏女」の方にとって参考になるのはもちろんのこと、日本の現代仏教を、周辺的な視点から考え直すための書として誠に意義深い。