下巻では雑賀孫一が本願寺に組した経緯から始まり,その後の彼の奮闘ぶりが描かれる.上巻同様,読んでいて本当に気持ちいい.
題名からして本書は“孫一ファン”が手に取る書だと思われる.作者の司馬遼太郎氏は(偉大なる文学者としては当然のことなのかもしれないが),見事にそのことを理解して筆を進めている.孫一が使っていたとされる陣貝は『和歌山市内矢ノ宮神社の社宝』,後世の水戸徳川家に仕えた雑賀家は『孫一の血を分けた子ども』,戦乱の中で歩けなくなった孫一の姿を謡ったものが『紀伊和歌山の郷土民謡』・・・.そのことを教えてくれるだけでも,風吹峠の粉河寺にてわずか40歳で謎の死(残念ながら,おそらくは暗殺された)を遂げた孫一を愛する読者にとっては,溜飲が下がる思いがする.
本書を手にして後悔することは決して無い.孫一を愛する人であっても,信長に敵対した者を知りたいという人であっても,読了感は爽快であろう.