学生の就職、若者の就業、旧態依然とした日本の「働き過ぎ」の現状などに論点を絞った、明快な論理構成、分かりやすい筆致の新書。何より、感情論・印象論を避け、広範でフェアなデータをおびただしく引用・活用している点、さすがに企業社会論・労働時間論の第一人者らしい書きぶりだと思う。思わず手帳にメモしたくなるような数字も多数紹介されていた。また、就活中の若い学生たちに対し「社会常識」「基礎知識」「専門知識」と並んで「労働知識」を学ぶ重要性をアピールし、社会環境に対する「適応」だけでなく「抵抗」をも忘れないように、と要約できそうな主張は興味深い。
もっとも、働き過ぎ、時間外の過重労働を指弾する際、労働者の圧倒的大多数が「強制的・準強制的に働かされている」という側面があることは否定できないものの、一方で、過重労働ではあっても「働くのが好きだ」といった古来からの「働きバチ」的な風土・慣行を受容している労働者も少数ながら存在することも確か。本書にはそうした一面への理解がやや希薄なような気もする。