口のきけない小唖(ジャッキー・チェン)は、少林寺に入門して2年間、日々
厳しい修行に耐えている。実は、小唖には、10年前に父親を何者かに殺
された過去があり、いつか父の仇打ちをすることを心に秘めていた。ある
日、小唖は、立ち入り禁止の洞窟に入り、繋がれている法愚(カム・コン)
という男と知り合う。その日から、法愚に食事を差し入れ、カンフーの秘技
を教えてもらう小唖。同時に、少林寺の客人の尼僧、世玉からは、相手を
傷つけない拳法を学び、腕をめきめき上げて行く。そして、小唖は、少林
寺でも難攻不落と言われる修行のひとつ、「木人路」に挑戦する…。
ジャッキー・チェン主演のロー・ウェイ・プロ時代のシリアス路線の佳作。動
く木の人形、「木人」という、特異な漫画的設定を盛り込み、ひねった仇討
もの(多くの人が指摘するように、トニーノ・ヴァレリの『
怒りの荒野 スペシャル・エディション [DVD]』
に着想を得ているのだろう)のプロットで、非常に観応えのある作品に仕上
がっている。もちろん、純粋にカンフー・エンターテインメントとしても優れて
いるが、作品の底に流れる、仏教的な因果応報の思想も強く感じられ興
味深い。
何より驚くのは、本作における、ジャッキー・チェンのスター性の乏しさ。ま
だ、映画の世界に入って間もない新人だったということもあるのだろうが、
好感は持てるものの、悪く言えば、貧相で華がない(まだ一重まぶたで、
発展途上の華奢な肉体)。しかし、そのマイナスとも言える華のなさが、本
作においては、却っていい方向に転がり、父の仇討を心に秘めた青年の
誠実さ、ひたむきさ、一途さを表現するのに繋がっている。その情念から
繰り出されるカンフーとアクションは、硬く荒削りながら、力強い。天性の
身体能力の高さの賜物だろう。
本DVDは、2006年にユニバーサルから発売されたもの同様、香港Fortune
Starのマスターを使用したもの。デジタル・リマスター版を謳っているが、傷
が多く、色ムラのある箇所も散見される。ただ、香港の35mm原版の保存の
悪さは有名なので、この点は、嘆いても仕方がないのかもしれない。特典等
も、ユニバーサル盤と完全に同一で、予告編メニューの各作品パッケージに
は、ユニバーサルのロゴがそのまま残っているぐらい(!)。
ということで、劇場公開及びTV放映で、本作に馴染んでるリアル・タイムの
ファンには残念だが、今回も吹き替え及び、東映版のMEは収録されていな
い。とはいえ、「ハッピー・ザ・ベスト」シリーズに加えられたことで、若い世代
が、廉価で(気軽に)、初期ジャッキー作品に触れられるようになった意義は
決して小さくないだろう。