「少数精鋭の組織論」というタイトルだが、「使える人材だけ集めて、勝てるチームを作れ」などという近視眼的メッセージでは、決してない。規模や世間体、流行に惑わされず、本質を追求しなさいという、玄人好みのプロフェッショナルサービス組織論なのだ。
料理の真理を求めてフランスに渡った著者だが、わかったことは、他人の真理は自分の真理ではなく、真理は自分で決めることだったという。「現役料理人には、時代のニーズに溶けこんで自分を変形させてゆく順応性が不可欠」と言って、常に向上心を忘れていないのだ。さらに、「本質を順守しているかどうか。優先順位は何か。それに即して力を注いでいるのか。そちらの評価軸の方が、外見よりもよほど本質を雄弁に語ってくれる」といって、マスコミに持ち上げられる有名店になることから一線を画している姿勢も、プロフェッショナリズムを感じさせる。
結局のところ本書のテーマは、「自分も含めての組織論」といえるだろう。リーダーとフォロワーという構造を意識せず、自分も部下から学び成長することで組織が強くなることを重視しているのだ。「支えがあるから料理長でいられる」「先輩は教える行為からさえ学んでいる(中略)後輩の存在も尊重すれば学べる余白はまだある」等、数多くの、しかも、押し付けがましくない名言が、随所にちりばめられている。
料理についての話がふんだんに出てくるので、グルメの人には「美味しく読む」楽しみも加わるだろうが、そうでなくても組織運営に少しでも関わったことのある人なら、本物の味わいをご賞味いただけるだろう。ボナプティ!