10年以上前、誰だったか記憶は定かではないのだが、
伊集院静の原点とも言える、初期の短編として「トンネル」という作品を挙げていた。
(多分、北上次郎ではなかったか……)
ほとんど激賞とも言える内容で、
私はそのあと伊集院静の本を探しまくったのだが、
どうしても見つからなかった。
新しい文庫本が出るたびに、「今度のには収録されているだろうか」と探したものだ。
そのうちあきらめかけていたとき、この「少年譜」が出た。
そしてその中に、「トンネル」が収録されていたのだ。
わずか10ページ少しの、短編というより「掌編」と言ったほうがよい作品。
私は迷わずこの本を購入した。
あっという間に読めてしまうのだが、
なんというか……すごいものを読んだ気持ちさえした。
「海峡」「春雷」「岬」……の三部作と微妙にリンクしている素材。
伊集院静の原風景を見ることができる17年前の短編である。
この作品を読めただけで、この本を買ってよかったと思った。