先日、『鉄塔家族』を読んで、その中に『少年詩篇』に納められている思い出を綴ったところがあったので、懐かしくなり、再読。
佐伯氏の作品のなかでは、この『少年詩篇』は、他のものとは少し違った位置にある作品で、大好きです。子供の頃の、誰憚ることのない想いを、のびのびと書いていて気持ちいい。47の掌篇 が、佐伯少年を浮かび上がらせて、なおかつ、誰にもある思い出を引き出すようです。どのページを開いても親しみ深く安らかな気持ちになります。
そして、私がこの本を大好きなわけがもう一つ。それは、とても美しい本だからです。多田文昌氏の、細密画のようなモノクロの挿絵が、とてもとても美しい!ほとんどのページに挿絵が施されていて、それが可愛らしい小さな小さなポットであったり椅子であったり、虫、雪の結晶、鳥、木、などなど・・・・・・。それらの絵をぱらぱらめくって眺めるだけでも、楽しいのです。初めて読んだとき、何と丁寧で贅沢な本だろうと思いました。各タイトルの下にも小さな挿絵があって、椅子が多く描かれているのですが、それがまた一つずつ違った絵なのです。
『少年詩篇』は、佐伯氏の故郷の言葉が多用されていて、子供らしい気持ちをストレートに表現するのによく合っています。「土器拾い」、「春の気配」、「蜘蛛の巣アンテナ」など、佐伯氏の作品のなかで何度も書かれてきたエピソードも、この本で読むとまた違った味わいです。氏の好きなルナールを彷彿とさせる『少年詩篇』。楽しかったことはもちろん、子供の頃、怖かったこと、心細かったことなど、鮮やかに蘇ってきて、時間を忘れてしまう作品です。