まさに、待ちに待ったDVD化と言ってよいだろう。柏原兵三の自伝的小説「長い道」を元に描かれた藤子不二雄Aの漫画「少年時代」を、更に映画化したのがこの「少年時代」である。以前からVHS版は出ていたが、長らくDVD化が待たれていた名作である。この映画自体は知らなくても、作中のクライマックスで使われた、井上陽水の歌う同タイトルの名曲をご存じの方は多いと思う。
東京から田舎 (富山) に疎開してきた少年が……とここでわざわざあらすじを書くまでのこともなかろう。ただひとつ指摘しておきたいのは、この作品は、直接的に戦争の悲惨さを訴えるような「プロパガンダ」まがいの映画ではなく、飽くまで大戦下という非常時における、少年たちのさまざまな心情や葛藤を描き出しているということだ。だが、それが直接的ではないだけに、逆に、この作品の奥深くには極めて強いメッセージ性をも感じ取ることが出来るのである。
ところで、原作の漫画とこの映画を比較してみると、やはり映画化に当たって、原作に見られる、或る種の「どぎつさ」を努めて抑えたという感じをまず第一に受ける。例えば、雪合戦のシーンをひとつとってみても、漫画では友人との険悪な関係に発展していくが、映画ではごく他愛ない一シーンに過ぎない。また、終盤でも、血みどろの暴力沙汰が描かれていた漫画とは一線を画し、「集団でのいじめ・嫌がらせ」と呼べる程度には表現が緩和されているように思える。これは人によって賛否両論あろうとは思うが、井上陽水のテーマ曲との調和ないし一体性に資する効果を生んでいるのは確かだ。
兎にも角にも、末永く後世に伝えていきたい名作である。DVD化によって、更に多くの人々がこの映画の感動を味わうことを強く期待したい。