子供は大人とは比べ物にならないほど強烈な感性の持ち主であり、(大人から見れば)必要以上に感傷に襲われることもあれば、無意味に極めて残酷な存在にもなりえる。そうして、そうした子供時代の体験は、人々の心の中に深く刻み込まれ、その後の人生に於いて様々な場面でフラッシュバックのように蘇り、生きることの意味を改めて問いかける。
そうした子供達の鋭い感性と郷愁をそそる思い出を主題に、作者の体験を絡めながら半分フィクション、半分ノンフィクションの形で出来上がったのが、この短編集です。「帽子」「魔法瓶」「滝へ降りる道」「晩夏」「少年」「帰郷」「黙契」「白い街道」「ある女の死」「ハムちゃんの正月」「とんぼ」「馬とばし」「岩の上」「裸の梢「夏の焔」「あかね雲」「眼」「魔法の椅子」の、計18篇が納められています。著者の自伝的小説「しろばんば」のような、ちょっとほんわりした温かみのある文体でかかれていて、秀逸な短編集に仕上がっています。長編を読むにはちょっとしんどい、という時にお読みになることをお勧めいたします。