著者らによれば,コミュニティー・ビジネスとは,地域生活圏に住まう人々が自らコミュニティーに役立つ事業に取り組み,その活動を通して「コミュニティーを元気にする」効果をもたらすものである。また,この活動は住民の自発性に基づくものであり,地域に潜在する資源を活用しながら,事業としての利益は確保するものの過度な拡大は求めず,営利事業とボランティアの中間領域的な性質を備え,活動範囲はローカルながらグローバルな視野に立った事業を展開する,といった特徴をもっている。
本書が取り上げているコミュニティー・ビジネスの事例は全部で24にのぼるが,その分野は実に多彩だ。人の生活の基本といえる食・住から,介護や高齢者雇用,まちづくり,学習,人材育成・起業支援,メディアやコミュニケーションまで,それぞれの活動に取り組む人々が「他人事」ではなく「自分事」としてプロジェクトを立ち上げた経緯が具体的に語られている。言ってみればこれは,地域の生活者が等身大の視点で自らの暮らしの場を見つめ直した末に生まれた,「オルタナティブ」な(もう一つの)仕事のカタログともいえるだろう。
企業優先の価値観に彩られてきた日本で,崩れて久しい地域コミュニティーに新たな関係性をデザインしようとするコミュニティー・ビジネスではあるが,本書では,それが本当に持続可能な発展を遂げていくための課題についても,簡単ではあるが具体的な指摘がなされている。実際に市民起業を考えている人や地域コミュニティーにかかわる自治体関係者,あるいは地域との関係を模索している企業人にとっても,大いに示唆に富む内容といえるだろう。 (フリーランス・ライター 渡辺 保史)
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