三度の飯よりヒアリングが好き(p.196)だと自称す
る渥美氏は、海外各国の政府・企業から国内の大企業・
中小企業まで、現場の人々の声を本書の随所に織り交ぜ
ている。
著者から判断して、本書は「学術書」だと思って購入
してみたら、そのようなわけで、評者としては少し驚いた。
(一般的に、「少子化」で扱われる学問領域は一冊の本な
どで過不足なく網羅できるほどの範囲には収まらるはずが
ないのに、「最終処方箋」という書名をそのまま信じて手
に取った評者の二の舞となることだけは無いように、しっ
かり確認した上で購入されたい)
■本書のどこが良かったか?
1.仏、北欧諸国の事例のみならず、韓国、台湾、シンガポ
ール、香港などアジア諸国の取り組みにも目を向けている点
(ただし、その記述内容は質量ともに少なめ)
2.企業の取り組みを扱った部分は、事細かに説明して
ある点
とくに、中小企業の(仕事と家庭の)両立支援策に
関する記述は、参考になることが少なくない。会社のなか
で両立支援制度を円滑に導入するにあたって、導入推進派
はいかに振る舞うべきか、まず誰を取り込めばよいか、そ
の戦略的方法も具体的に示されている。
■本書のどこが不満だったか?
1.主張の根拠が薄弱な点
たとえば、出典不明の数字、著者の印象論、伝聞情報など
が混在している点。適宜挿入されている図表等をみても、
「富士通総研が作成」としか書かれていない場合が多い
(これでは何を論拠にしたのか辿ろうにも辿りようがない)。
2.「各種資料により作成」との記述が散見される点
原資料を明示してほしかった。福祉国家の類型を示すに
あたっても、「各種資料に基づき」としている(p.81)。
探せばすぐに見つかり、数字で明確に示せるような情報な
どは掲載すればよさそうなものだが...シンクタンク特有
の事情でもあるのか?
3.著者が想定する読者層が不明な点
研究者として双方とも、本としての体裁というものに配慮す
べきだったのではないか。
(ちなみに、参考文献一覧も無い。あとがきも無い)