いつものごとく幻惑に魅了され、巧みな描写にため息がでた。どうしてこんな表現ができるのだろう?すべての作品において描かれる時代はあの狂気の時代である。しかし、そこに直接的な残酷さは描かれない。むしろ、静謐な印象さえ与えられるのだが、やはりエロスとタナトスのシンメトリーが存在し、それが常に通奏低音として流れているのである。
またこの中の何作かは、その構成のおもしろさにも注目したい。よく使われる手かもしれないが、二つの時系列を交互に語ることによって全体の意味合いを統合するという手法が使われているのである。それがあまりにもかけ離れた描かれ方なので、ある意味ちょっとした緊張感が生まれている。ここが皆川女史の素晴らしいところだ。このスゴイ作家を知らずに過ごすということは、一つの罪であります。未読の方は是非読んでみてください。