そのバレーボールの天才故に周囲と衝突し挫折・孤立してしまった少女が,高校進学を機に再びバレーに居場所を見出していく過程を描く作品.
丁寧な人物像の描きこみや時折ハッとさせられる発言等勧めどころは多いが,ここでは登場人物間の関係が徹底して相対化されている点を特に指摘しておきたい.例えば主人公・大石練(ねり)と高校で初めて女子バレーの世界に入ってきた小田切学との関係.入部者の少なさから未経験者である学にも声がかかった際, 練はこう言って踏切りを付けるよう促す.「経験より目的がはっきりしてる奴が優先だと思うよ」と.だが,二人の関係は練の一方的優位には終わらない.対人関係についてネガティブな思考に陥りがちな練に今度は学が知らず知らずのうちにこう諭す.「本当のところは本人に聞かないとわからない」.周囲の無理解さ故に長い間孤独だった二つの魂が,ようやく初めて触れ合い共振する瞬間である.
このような人間模様の描出に成功している点,この漫画は「スポーツ」「少女」「バレー」等の既存の修飾語で収まり切らない射程の長さを持つ.書き手が女性でまた少女を主人公とする作品が青年誌での連載されていることに全く違和感がないのは理由のないこととは思えない.
半月刊誌において更に月1連載とされている等,編集側からの充分な配慮も伺える.性急でない着実な話の展開と相まって,本作は間違いなく作者の代表作になると言えるだろう.シリアス一辺倒なだけなく,作者特有の過剰な設定(和装の麗人が女子部監督,ぶっ飛んだ金の遣い方をするお金持ち等)や少女達が時折見せる年齢相応の表情も面白く快い.買うべし,読むべし.