ホラー映画の主人公であるヒロインが、撮影のため崖のそばの洋館にやってくる。その撮影中に、ヒロインがかつて犯した殺人を告発する台本が渡される。四年前、「羅針盤」という女子高生劇団があり、ヒロインはその一人を殺していた。誰にも気づかれることのなかった殺人だった。物語は四年前の「羅針盤」の活動と、現在の映画の撮影シーンが交互に描かれ、結末に向かって収束していく。
「羅針盤」を結成したメンバーの当時の心情や行動は時にはみずみずしく、時にはとげとげしくもあり、周囲の人々もけっして好意的ではないが、不思議とさわやかである。読み終えて妙に納得してしまうのは、青春時代というものが楽しさや喜びだけではなかったことを知っているからかもしれない。
ミステリーとして人を驚かすような大トリックを使っているわけではないが、音を利用したトリックや、年齢やヒロインの発言でのミスディレクション(フェアプレイ)、最後の墜落のシーンなど、細かい部分でよく考えられているミステリーである。スポーツ選手には「記録に残る選手」と「記憶に残る選手」がいるが、この作品は「記憶に残る作品」といえるだろう。青春ミステリーの傑作として、青春小説が好きな人、ミステリーが好きな人、両方の読者に読んでもらいたい作品である。